今日も外では雪が舞っています。
ああ、なんと美しい事でしょうか。
そして今日もこの中で
今日も母が見舞いに来てくれました。私の好きなりんごを持って。
初めは友達も見舞いに来てくれましたが、最近は滅多な事がない限り来なくなりました。それも仕方ないでしょう。こんな所で身動きも取れない私といるより、外で自由に走り回りたいものでしょう。
もう走り回る歳などではないかもしれませんが。
母にも毎日来なくてもいいと言っているのですが、苦笑いをするだけで、次の日にはまた来てくれるのです。
私への同情なのかもしれませんね。
窓の外は雪が舞っています。ゆらゆらと、自由に。
その姿まで羨ましいと思ってしまう私は、やはりおかしいのかもしれません。
母がりんごをウサギ形に切ってくれました。もうそれで喜ぶほど子供でもないのですが、私は喜びます。
母の中で私は変わらないのです。
はらはらと降る冬の結晶は、寂しそうに踊りながら地上へと舞い落ちます。
それのなんと美しい事でしょうか。
いつか溶けてしまうその儚いカケラは、絶える事なく地上に降り注ぎます。
外ではしゃぐ子供達の声が聞こえました。どうやら雪合戦をしているようです。
なんと微笑ましい光景でしょうか。
どこかの家の光が白い地面に反射しています。
なんと神々しい輝きでしょうか。
人々はそんな事もお構いなしに、足早に家路へと急いでいます。寒いので早く家で温まりたいのでしょう。
なんとも寂しい事です。身近に感じるからこそ、外にある美しさに疎くなってしまうのでしょう。
私はその美しさを痛いほど感じています。
後のない者の悲しい性なのでしょう。
明日には雪は止んでしまうでしょうか。
明日にも雪が見れるでしょうか。
私は眠りの為に目を瞑ります。
今日も外では雪が舞っています。
ああ、外はなんと美しい事でしょうか。
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