「すいませんでした」
「…………」
「本当ごめん。反省してる」
「…………」
「いいかげんこっち向いてくれよ。俺謝ってんだろ?」
「…………」
「…………」
「…………」
「……ゲームしないでこっち見ろって言ってんだろうがぁぁぁ!!」
「うわぁっ! ゲームにチョップされたぁぁ! 親父にもされたことないのに!」
「親父がいちいちゲーム機にチョップするわけねえだろうが! 人が謝ってるときぐらいこっち向けって言ってんだよこのゲーマー!」
「あっ、今ので世のゲーマーを敵に回したね! 今のゲームをなめるなよ。見よ、このすばらしいグラフィック! 豪華声優陣! 今のゲームは最新技術をたっぷり盛り込んだハイテク機械なんだぞ!」
「うっせえな。ゲームなんかスーファミでいいんだよ、スーファミで。昔の素晴らしさを忘れるなよ。あの淡々とした動作が一番ゲームらしいだろ」
「スーパーファミコンなんかすぐセーブ消える上に、ちょっとの振動でエラー出るだろ! それに比べてDSはそんなことめったにないし! 画面タッチでいけんだぜ! 画面タッチ!」
「わかってねえな。そのいつ消えるかもわからない緊張感がいいんじゃないか。そんな棒操作なんて俺は認めないね! 普通にボタン操作しろよ! ABBAY右とかで必殺技出せよ!」
「古っ! 考え古っ! この堅物が! 今時の小学生なんかスーファミ知らねえよ! そんなにスーファミに想いを入れてるやつはじめてだよ!」
「うっせえな! いいだろうが別に! そうじゃなくて俺は人が話してるときはゲームをするなって言いたいんだよ!」
「しょうがないなあ……」
「やっとわかったか……」
「…………」
「…………」
「…………」
「……何してるんだ?」
「ふんふふーん」
「何してるんだって言ってるだろうが」
「ふーふんふーん」
「……何してんだって言ってんだろうがこの野郎!」
「うわ、耳痛っ! キンキンする! いきなり何すんだよ。ヘッドホン返せ!」
「返せじゃねえだろ、お前何してんだよ!」
「え、音楽聴いてたけど?」
「意味がわからないって顔してんじゃねえよ! 何で音楽なんて聴き始めるんだよ!」
「え、だってゲームするなって言ったから」
「だからって何でそうなる!? お前の思考回路どうなってんだ!? 俺は人が話してるときは相手の顔を見てきちんと聞けと言いたいんだ!」
「あ、なーんだ、そうなの? じゃあはじめからそう言えばいいのにぃ。さ、どうぞ」
「今日の夕飯お前の嫌いなトマトとマグロと椎茸が入ってるからごめんと言おうと思って」
「…………」
「…………」
「何してくれてんのちょっと! 何でわざわざ嫌いだとわかってるもんだそうとするの!? しかも三つも!」
「食べれるようにしてやろうかと思ってな。ちゃんとごめんて言ったじゃないか」
「謝ればどうにでもなると思うなよ! もうやだ俺実家に帰るわ! 母ちゃんに甘えてくるわ!」
「残念だけどそのお母様に今日はこのメニューでお願いしますって言われたんだぞ。たぶん追い返されるんじゃねえの?」
「はぁ!? 何でぇ!?」
「お前の好き嫌いが激しすぎるからだよ。お前の将来のためだってよ」
「無理無理無理! 別に俺の将来に支障ないからトマトとマグロと椎茸食べれなくても! ちょっ、笑顔でその夕飯押し付けんのやめてくんない!?」
「ほらほら、あーんしてみろ、食わしてやるから。ほれほれ、あーん!」
「俺もうこんな姑みたいな男と住むの嫌だぁ! ぎゃあああああああ!」
「俺だってお前のような子供みたいな男と住むなんて嫌だよ。ほれ、もう一口あーん」








仲良し同居人







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