今日からよろしく御兄妹! 13
「梅雨だ」
「そうだね」
「梅雨に入ると憂鬱になるな」
「そうだね」
「外は雨ばっかだし」
「そうだね」
「……妹さん、俺と会話するのも鬱陶しい?」
「うん」
「即答!?」
「だって本当のことだもの。うそつかないのはいいことでしょ?」
「いいことだよ、いいことだけどさあ!そこはうそをついてもいいところなんだけど!」
「じゃあ兄さんと会話してても何とも思わないよ」
「それも嫌だぁ!」
「どうしろって言うの」
「どうせうそつくならもっといい言い方してくれよ!」
「いい言い方ねえ……ない」
「あるだろ?いやあるはずだ。日本にはもっといっぱいいい言葉があるはずだ。探しなさい」
「命令?」
「探して下さいお願いします」
「そこまで言うなら探してあげる」
「お願いします」
「じゃあ、兄さんと話すと自分も子供に帰れて嬉しいし、正直者の兄さんをいじめるのは実に楽しいよ」
「うそか本当かもわからないこと言うのはやめて!」
「うそとは言わないよ」
「そこはうそだと言ってください!」
「仕方ないなあ。うそだよ」
「本当に仕方なさそうに言った!」
「さっきから注文が多いよ」
「注文って言うか、俺の人間性が皆無になるセリフだったから!」
「元から皆無だったじゃない」
「妹さんんんんん!?」
「ん?私何か言った?」
「いや、そんないい笑顔されても誤魔化せないから!はっきり言ったから!」
「ちっ、細かい男だなあ」
「舌打ちした?ねえ舌打ちした?」
「女の子がそんなことするはずないじゃない」
「したから!女の子が今舌打ちしたから!」
「今っていつ?何時何分何秒地球が何回回ったとき?」
「小学生の屁理屈!?」
「あー、紀子ったら、雨続きでイライラして」
「イライラの仕方が陰険だけど」
「きっと孝彦くんだけだから大丈夫よ」
「それ、大丈夫って言うのかな……」
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