今日からよろしく御兄妹! 12 後編





「さ、ここで花見をしましょう」
「……え、ちょ、……え、う?」
「何意味不明なこと言ってんの。中途半端に膝曲げてないで座りなさい。もしくはしっかり立ちなさい」
「座ります」
「よろしい」
「紀子ちゃん、おつまみとかあるけど食べますか?」
「あ、頂きます。お弁当とかあるけど、食べますか?」
「頂きます。紀子ちゃんは料理がうまいと孝彦が言ってたんで楽しみだったんです」
「いえ、それほどのものじゃないですよ。お口にあえばいいんですけど」
「美味しいですよ。特にこの出し巻き卵なんか最高です。良い奥さんになれますよ」
「ふふ、ありがとうございます」
「ははは」
「ふふふ」
「はははふふふじゃねぇぇぇぇえー!!万年新婚夫婦みたいでムカつくうぅぅぅうー!!」
「何をいきなり叫んでるのよ、行儀が悪い」
「そうです、落ち着きのない子供みたいに」
「悪かったな!お前らが落ち着き過ぎなんだよ!勝手に人を差し置いてべらべらしゃべりやがって」
「あ、すねたの?」
「すねたんですか?」
「お前ら本当に無神経って言うかさぁぁぁぁ!!ってか俺はお前が何でいるのか聞きたいんだよ、佐之助ぇ!」
「僕は紀子ちゃんに誘われただけですよ」
「私が誘った」
「って言うかなんで妹はこいつ知ってんの?ねえ何で家に一度も呼んだことない俺の同級生知ってんの?」
「同級生ではなくて友人と言って頂きたいですね」
「うっせぇぇ!昔の農民みたいな名前をした奴は黙ってろやぁぁぁ!」
「ふ、今のは傷つきましたよ」
「うそつけ!ふ、って言ったじゃねえか!何だその爽やか笑顔!ムカつくんだよ腹立たしいんだよ気に障るんだよ!!」
「ははは、自分にないものを持っているからと怒られても、どうしようもありませんね」
「誰がそんなこと言った?お前の脳内に住む鬼畜菌か?お前の腹黒い笑顔なんて誰も欲しくねぇぇぇ!」
「私も罪ですねえ」
「何憂い帯びた顔してんの?お前もう役者になれば?うん、そして俺の目の前から消えてくれ」
「嫌ですよ。楽しみが減ってしまうではありませんか」
「減らせぇぇええ!!人をおちょくって得る楽しみなんか消えてしまえぇぇ!むしろお前が消えろ!」
「おちょくるの楽しいじゃない」
「今なんて言った?妹なんて言ったの?兄ちゃん何も聞こえなかったよ」
「現実逃避ですか。弱い人間のすることですね」
「お前ら二人の相手してりゃあ誰でも弱くなるだろうよぉぉぉ!!」
「兄さん、うるさいわ。それに失礼よ」
「ば、はぁっ!」
「ほお、これが噂に聞いていた兄専用武術ですか」
「噂ってなんだぁ!」
「噂は噂ですよ」
「何その最後にハートマークでも付きそうな笑顔と声!うざ!マジお前の腹黒さキモ!」
「あぁっと、ごめん兄さん。手が滑っちゃった」
「何で滑らす前に言ってんの?ってマジでビン投げ……がぁは!」
「彼とはちょっとしたことで知り合ったのよ。それだけ」
「ちょっとしたことってなんだよ!つうか自分で言うけど俺よく生きてんなぁ!」
「馬鹿だから丈夫なんですよ」
「お前は黙ってろって言ってんだろうが敬語マニアの腹黒鬼畜男がぁぁぁ!」
「兄さん、とどめ」
「ぐばぅ!!」
「おお、素晴らしい技の切れ味ですね。今度教えて下さい」
「いいですよ。コツさえつかめば簡単ですから」
「あなたとは本当に気が合いますね」
「ふふ、これからもよろしくお願いしますね」
「ははは」
「ふふふ」








「隣にいるのに気づかれないむなしさ」
「それはいいけど、孝彦くん助けなくてよかったの?」
「俺にはそんなことできる勇気はありませんでした」



全国の佐之助さん、ごめんなさい。


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