今日からよろしく御兄妹! 02





「…………」
「…………」
「……暑い……」
「分かってる事をわざわざ言うな」
「なんだよ、じゃあ他に何を言えばいいんだ」
「なにも」
「……気温はこんなに高いのに、お前だけは冷めてるよ」
「私も暑いけど? 人間体温は大体同じよ」
「……ああ言えばこう言うね」
「ありがとう」
「ほめてねぇよ。しかもしっかり棒読みじゃないか」
「当たり前でしょ馬鹿」
「お前兄貴に向かって馬鹿って言ったな。畜生、そうだよ俺は馬鹿さ。今行ってる高校なんか滑り止めなもんだから留年の危機だよ!」
「知らなかった事をこの暑い中わざわざ熱弁してくれてありがとう。留年なんかしたらタダじゃおかないわよ」
「やめろよ。お前が言うとシャレにならない」
「本気だもの。留年した夜は気をつけなさい」
「闇討ちか闇討ちなのかそうなのか妹」
「物騒な。やるならちゃんと起こしてやるわよ」
「余計危ないじゃないかよ! なんだよ、俺が苦しんでるところが見たいのか!」
「…………」
「何その笑み何その笑み何その笑み!!」
「……別に?」
「じゃあ何で目をそらすんだよ。ほら兄ちゃんの目を見て言ってみろ」
「あんたの苦しんでるところを想像して微笑してました」
「そっちかよ!!」







「孝彦と紀子ちゃんは仲がいいなぁ」
「ほんと。この暑いのに元気で……若いっていいわねぇ」
「なんかニュアンスに妬みが入ってた気がするんだけど」
「気のせいよ。それより、今日は暑いから紀子も冷静じゃないわねー」
「そうだね。いつもはもっと冷えてるのに、今日は少し生暖かいというか」
「どこにツッコんでいいのか分からないけど、それ明らかにほめ言葉じゃないわよね?」




Copyright(c)2005-沢野いずみ, Inc. All rights reserved.